日本国内の企業のうち海外展開している企業は24,959社ございます(「第47回海外事業活動基本調査概要」引用)。今後グローバル化が進み、日本国内の企業では多くの外国人雇用がされると思われます。雇用の際に特に注意するべき点は「在留資格」を取得し、その在留資格の範囲内での活動のみ許されることに留意しなければなりません。この記事では外国人を雇用する際に必要な「在留資格」について記載をしていきます。
【この記事の内容】
<1.どのような種類の在留資格で雇用が可能なの?>
<2.雇用方法のパターン別事例>
<3.在留期間>
<4.雇用形態、報酬額>
<5.技能実習ビザや特定技能ビザとの違い>
<6.身分系在留資格との違い>
<7.まとめ>
<1.どのような種類の在留資格で雇用が可能なの?>
現在法律で定められている就労ビザの中で、就労ビザとして代表的な在留資格は以下の通りです。
「技術・人文知識・国際業務」
日本で就労ビザを取得する際に最もポピュラーな在留資格となります。「技術(理系)」「人文知識(文系)・国際業務」の在留資格が統合され、「技術・人文知識・国際業務」という1つの在留資格となっております。
「技術」
SE、プログラマー、設計・開発等の技術系の専門職に従事する外国人がこの類型です。
「人文知識」
経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的知識を必要とする専門職に従事する外国人がこの類型です。
「国際業務」
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等の外国の文化に基盤を有する専門職に従事する外国人がこの類型です。
「技能」
外国特有の料理店における調理師がこの在留資格に該当します。日本で多く見受けられるのは「インド料理店」や「中国料理店」等です。
「企業内転勤」
日本企業の海外の子会社等の関連会社の外国人社員を人事異動で転勤する「専門技術者等」を受け入れるための在留資格となります(単純労働不可)。
「介護」
2017年9月からスタートした新しい在留資格となります。在留資格「介護」ビザを取得するためにはいくつかの要件をクリアしなければなりません。
<2.雇用方法のパターン別事例>
【留学生(日本の大学、短大、専門学校卒業予定者)を雇用】
既に日本に在留している外国人のため、「留学」ビザから「就労」ビザに変更が必要です。就労ビザの要件として、学校の「専攻内容」と「職務内容」のリンクが必要になります。すでに高いレベルの日本語能力を習得しているため、企業側でのニーズに沿った採用ができます。
【すでに就労ビザを取得している外国人を中途採用】
既に就労ビザを有している外国人を中途採用する場合、外国人が有している在留資格は「以前の職場での職務内容」と「学校での専攻内容」のリンクで就労ビザを得ているため、就労ビザを得ているからといって、どのような職場・職務に就けるわけではございません。転職後の在留期間更新でいきなり不許可となる可能性もございますので、採用時点で就労資格証明書を取得することを強く推奨いたします。
【海外で直接雇用して呼び寄せ】
自社で雇用した外国人を海外から直接「技術・人文知識・国際業務」ビザで呼び寄せるために「在留資格認定証明書交付申請」をする必要がございます。
当然のことながら、就労ビザの要件として、学校の「専攻内容」と「職務内容」のリンクが必要になります。なお、海外で専門学校を卒業している場合は学歴とは認められませんので注意が必要です。
【海外支店・子会社等で雇用している外国人社員の人事異動】
上記「企業内転勤」で説明の通り、日本企業の海外の子会社等の関連会社の外国人社員を人事異動で転勤する「専門技術者等」を受け入れるための在留資格です。(単純労働不可)
専門技術者等ですので、「海外企業での職務内容」と「日本企業での職務内容」が「技術・人文知識・国際業務」の範囲内であることが必要です。
<3.在留期間>
在留期間はそれぞれ「5年」「3年」「1年」「3か月」です。
<4.雇用形態、報酬額>
直接雇用、派遣雇用が可能ですが、在留資格「企業内転勤」では「直接雇用」のみとなります。
また、就労ビザの場合、報酬額の規定として「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」が必要です。
<5.技能実習ビザや特定技能ビザとの違い>
就労ビザでは特定の専門的技術・知識を要して職務に就くことができる在留資格のため、「単純労働」は不可となります。
技能実習生ビザや、2019年4月スタートの特定技能ビザでは在留期間の定めはございますが、法律で規定された範囲内での「単純労働」が可能です。
<6.身分系在留資格との違い>
在留資格の中には以下4つの身分系の在留資格がございます。
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「永住者」
これらの4つの在留資格は就労ビザとは異なり、原則就労制限がございません。そのため、単純労働・風俗等を含め法令に違反しない限り、労働制限がございません。
<7.まとめ>
いかがだったでしょうか?
外国人を自社で雇用する際には必ず「在留資格」が必要になります。上記で説明した内容を知らずに雇用して後々トラブルにならないためにも、まずは在留資格の専門的知識を理解しなければなりません。在留資格申請手続きは非常に煩雑なため、在留資格申請のプロに依頼することが外国人雇用の最短ルートだと思います。
2019年1月10日執筆
行政書士法人エベレスト 代表社員 野村 篤司
文責:everest
執筆:2019年1月10日